【ふりかえった】今年よかったもの 読書編


うちのよしおさん。

まずはある本を読んでおかしな夢を見たので、その話から。怖い話が苦手な方は先へどうぞ。

森達也『A3』(集英社文庫)。ウェブで全文無料公開されているときに読んで、ある女性が自分のお母さんが見たという夢のエピソードを読んだまさにその夜、今度は私が、天井が崩れてきて、その瓦礫の中から腕が伸びてくるという夢を見て(怖いっすよね…)、夜中叫んで起きるという映画みたいなシチュエーションになった本。森達也のルポルタージュはちょっと気をつけて読んだほうがいいとは思ってたけど、ここまでのレベルとは。恐るべし。

仕事の役に立つなあと思ったのは3冊。
ナディ『ふるさとって呼んでもいいですか。6歳で「移民」になった私の物語』(大月書店)。ツイッターにも書いたけど、タイムスリップして6歳の彼女をぎゅっと抱きしめてあげたい。10数年ぶりにイランに里帰りしたときに、母国であるはずのイランに馴染めない様子もきちんと描かれていて、いくつかの国をこうやってまたぐと自分のアイデンティティがかなり揺さぶられるのだけれど、このあたりは来年読む予定のアミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』につなげていきたい。

中野円佳『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』(PHP新書)。日本の男女格差の大きさは、フランスでもなかなかに有名。それは家族の世話、家事の時間、勤務体系などなどにおいて、日本では誰かが家にいないと生活が回らない仕組みになっているからだ、という話。私は結婚して子供ができてから日本で会社員生活をしたことがあるけど、あの正体不明のプレッシャーはなんだったのかと今でも時々思い出す。

神山典士『新・世界三大料理 和食はなぜ世界料理たりうるのか』(PHP新書)。あまり食にこだわりのない私は、わりとなんでもおいしくいただけるのだけれど、フレンチ、中華、和食それぞれの歴史や背景を知ると、もっとおいしくいただけます。タイトルに「新・世界三大料理」ってあるのは中華とフレンチはゆるぎないけど、3つ目がはっきりしないから。和食はその3つ目になれる可能性がある、ということがタイトルにも現れている。食にダイレクトに影響しているのは、まず自然環境。それから歴史と思想なのがよくわかる1冊。「料理で世界を支配する」のがフレンチだ。この「料理」を「言語」に変えても通じると思う。オリンピックの第一公用語は英語の前にまずフランス語。

あとは人生にじんわりと効きそうな2冊。どちらの本も自分の経験から、自分の言葉で本を書きました、っていうのがしっかり伝わってくる。

中越裕史『やりたいこと探し専門心理カウンセラーの日本一やさしい天職の見つけ方』(PHP研究所)
大原扁理『なるべく働きたくない人のためのお金の話』(ボイジャー・プレス)

フランスでは年金改革に対するデモの嵐が吹き荒れているし、対する日本も省庁が「老後に2000万円用意しろ」みたいなことを言う国だけど、どちらもお金の話しかしてないところが同じ。一回立ち止まって、仕事って、お金って何?と考えてみたい方におすすめです。

最後にもう1冊。今年のクリスマスに村田沙耶香『コンビニ人間』(文春文庫)のフランス語版を、とある家族にプレゼントしたのだけれど、感想が楽しみ。イギリスではけっこう売れているらしいけど、フランスではどんな反応が帰ってくるかな。私の生徒さんで読んだ人は、あれはハッピーエンドでしょって面白がっていたが。

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